正月一日の意義
古来、正月一日は、一年で最も意義深い祝日とされ、様々な行事が行われてきました。
日蓮正宗で行われる元旦勤行は、世間の正月行事とは大きく異なり、極めて重要な意義を有する法要です。
日蓮大聖人は『十字(むしもち)御書』に、
「正月の一日は日のはじめ、月の始め、とし(年)のはじめ、春の始め。此(これ)をもてな す人は月の西より東をさしてみつ(満)がごとく、日の東より西へわたりてあき(明)らかなるがごとく、 とく(徳)もまさり人にもあい(愛)せられ候なり」(御書一五五一)
【通釈】正月の一日は日の始めであり、 月の始め、年の始め、春の始めである。この元日をもてなす人は、あたかも月が西から東をさして満ちていくように、太陽が東から西へわたって明るく一切を照らすように、徳も勝(まさ)り人にも愛されるのである。
と仰せられ、正法の信仰をもって元日を大切に迎える人は、その志によって
勝れた徳が具(そ)わり、人からも愛されると教示されています。
また同抄には、法華経に敵対する謗法の人が災(わざわ)いを招き寄せるのに対し、法華経を信ずる人は幸(さいわ)いを集めることができること、さらに法華経を信ずる人は、香木の栴檀(せんだん)が芳(かぐわ)しい香りを具えているように、福徳を具えることができると教示されています。
私達は、このように尊い妙法の功徳に浴することができる元日を、仏法の深い意義がある日と心得、信心をもって元日を祝うべきです。
正月は妙の一字のまつり
そもそも、法華経の開経である無量義経には、
「無量義とは一法より生ず」(法華経一九)
と説かれています。 すなわち宇宙法界の森羅万象(しんらばんしょう)は、ことごとく妙法蓮華経の一法より出て、また妙法に納まるのであり、私達自身も、知ると知らざるとにかかわらず、根源の妙法によって存在しているのです。
この根源の一法こそ、久遠元初(くおんがんじょ)御本仏の再誕である宗祖日蓮大聖人が命を懸けて弘められた妙法であり、末法流布(るふ)の大白法たる法華経本門寿量品文底の南無妙法蓮華経なのです。
私達、末法五濁(ごじょく)悪世の衆生は、この仏法に結縁(けちえん)することによって、初めて即身成仏という永遠不壊(ふえ)の幸福をつかむことができるのです。
その意味から、大聖人は『秋元殿御返事』に、
「五節供の次第を案ずるに、妙法蓮華経の五字の次第の祭りなり。正月は妙の一時のまつり」(御書三三四)
と仰せられ、正月の一日を妙の一字の祭りと心得て迎える人こそ、大聖人の仏法の大いなる意義と功徳が具(そな)わると御教示されているのです。
神社等への参詣は謗法
世間でも、多くの人が「一年の計(けい)は元旦にあり」として、一年の始まりを重んじ、また「初詣は(つもうで)」といって他宗の寺院や神社に参拝しています。
しかし、大聖人が『立正安国論(りっしょうあんこくろん)』に、
「世皆(みな)正に背(そむ)き人悉(ことごと)く悪に帰(き)す。故に善神国を捨てゝ相(あい)去り、聖人所(ところ)を辞して還らず。是を以(もつ)て魔来たり鬼(き)来たり、(災さい)起こり難起こる」(御書二三四)
【通釈】世の中は皆、正しい仏法に背き、人々はことごとく悪法に帰依している。故に諸天善神は国を捨て去り、聖人も所を辞して還らない。そこに魔や鬼が来て入り込み、様々な災難が起こるのである。
と仰せのように、世間の人々が正法(しょうぼう)に背(そむ)き、謗法(ほうぼう)の邪宗教に帰依(きえ)しているために、 善神は天上に去ってしまい、神社等には悪鬼魔神が入り込んでいます。したがって、神社仏閣に神や仏・菩薩を祀(まつ)っていると言っても、実は悪鬼の住処(すみか)となっているのです。
故に、正しい仏法を信じない人々が、これらの寺社に参拝したとしても、福徳を積むどころか、かえって謗法の悪業を積み、苦しむことになってしまうのです。
もしも、このような謗法の地に参拝したり、祭りに参加したり、寄付をすれば、
魔の力を増長(ぞうちょう)させ、自ら謗法を犯すことになってしまうため、私達は厳に慎むべきです。
元旦勤行には、家族そろって参詣を
真実の新年のお祝いは、本門戒壇(かいだん)の大御本尊を信仰する日蓮正宗の僧俗のみが行えることを知らなくてはなりません。
総本山大石寺においては、正月一日、 御法主上人の大導師のもと、多くの僧侶と檀信徒が出仕・参詣して、元旦勤行が厳粛(げんしゅく)に執り行われます。 そこでは、下種三宝尊に御報恩申し上げるとともに、広宣流布の成就(じょうじゅ)と人類の幸福、本宗僧俗の一年の無事息災(そくさい)が願われます。
そののち、御法主上人から親しくお言葉を賜(たまわ)り、終了後には、客殿前の広場において甘酒を頂戴して新年をお祝いします。
また、これにならって、全国の末寺(まつじ)においても元旦勤行が行われています。
私達は、必ず寺院の元旦勤行に参詣し、これからの一年を、弛(たゆ)まぬ信心を貫き、地涌(じゆ)の菩薩の眷属(けんぞく)の名に恥じない信行に邁進(まいしん)できるよう、御本尊にお誓い申し上げることが大切です。
なお、正月の飾り付けは、門松、お鏡飾り(鏡餅)等で行います。
門松は、十二月三十日までに門や玄関等に松・竹・梅・樒(しきみ)などをもって一対(つい)をしつらえ、正月七日まで飾るのを通例とします。
また鏡餅は、御宝前(ごほうぜん)や床(とこ)の間(ま)などにも供えます。この時、白色・赤色の紙などを細長く切った御幣(神社等で使用する装飾)は使用しません。この鏡餅も、十二月三十日までに用意し、正月七日まで飾るのが通例となっています。
なお、飾り付けの仕方や期間等については、地域ごとの慣習もありますので、所属寺院の指導を仰ぎましょう。